小倉には小倉港があり、ここから松山に行くフェリー航路がある。小倉にいるうちに一度は乗ってみたいなと思っていたら、昨年末に2025年6月末に航路廃止になるというニュースを見て、松山への駆け足旅行を計画していたのだった。

松山・小倉フェリーは、松山観光港と小倉港を7時間5分で繋ぐフェリー航路で、隔日21時55分に運航する。もっとギリギリに出ても良かったのだけど、家で手持ち無沙汰で過ごすのも飽きた夫が、少し早めに出ようやというので、20時に家を出てコンビニで朝食を調達し、小倉駅前のスタバで時間を潰す。ほうじ茶ラテとソイキャラメルマキアート。隣に男子と待ち合わせでコーヒーも頼まず堂々と座って時間つぶしする女子高生の3人組がいて、こういう緩さは地方っぽいなぁとちょっと思った。


夜なので、小倉駅の新幹線口にある、メーテル・鉄郎、ハーロック像もライトアップされている。この像は有名なので、いつ行っても誰かがスマホを構えているのだが、こんな真っ暗な夜でも先客がいて驚いた。そういえば、夫はこの像が有名なことを知らず、ぼんやりとメーテルの隣に座っていたら、同じくらいの年齢の中年男性に「撮影するから早くどいて」と言われたことがあるらしい。私はベンチだから座っていても良いと思うけど、世の中には自分にとっては不都合だから「どいて」って言えちゃう人もいるんだな、という意味で驚きエピソードではあった(せめて、「どいて貰えませんか」じゃなかろうか、とは思う)。

フェリーは基本、車に乗る人が使うものなので、大抵、徒歩では行きにくいところにあるし、徒歩で来る人のことはほぼ考えられていない。小倉港もそうで、小倉駅新幹線口から徒歩17分とあったが、多分、20分以上歩いたと思う。案内板もなく、街路灯もほぼない。ひとりで、初見だと、相当心細かったと思う。夫と二人だったが、それでも、フェリー乗り場を探し当てたときの安堵感は大きかった。
待合所に行くと、そこまでの人気のなさとは打って変わって、思った以上に賑々しかったことに驚いたが、どうやらお遍路さんツアーの一団だったそうで、結構な老齢の男女15人ほどが引率されて先に入っていた。出港は21時55分だが、その1時間ほど前には乗船できるようだった。


乗船したのは「くるしま」で、乗船した途端、昔の新幹線のにおい(消毒液と排泄物のにおいが混じったような感じ)がして、いかにも古い乗り物だなと実感した。このにおいの中で7時間も過ごすのかと少し暗鬱となったが、1時間ほどすると慣れたのでまあ良かった。





行きは奮発して特等Aを取ってみた。ユニットバスとトイレと冷蔵庫があるのはここだけで、ベットもちゃんと1人用のベッドが2つ。ちょっとしたビジネスホテル仕様になっている。大浴場があるので結局風呂は使わなかった。でも、トイレがあるのはやっぱりありがたかった。テレビは地上波は繋がらず、BSのみ。NHKを付けると「料金払え」のテロップが出る。テレビの隣にWi-Fiのルーターっぽいものが取り付けられていて、ひょっとしてWi-Fiが使えるのか? とときめいたのだが、オゾン脱臭機だった。何だか使う気になれず、スイッチはオンにしなかった。

一番先頭にある客室なので、窓を開けるとこういう景色が見える。向こうの明かりは(たぶん)門司。

フェリーとしては短距離なので食堂はなく、売店のラインナップも最低限の飲料と乾き物、カップ麺程度なのだが、お遍路グッズが一通りあるのがらしい感じ。

松山の会社らしく、フェリーの中にも俳句ポストがある。折角なので私も一句捻ってみるかと投句用紙を貰ってはみたが、全く思いつかなかった。俳句は短いし、季語を入れるというお約束もあって、作り慣れないとかなり難しく感じる。

売店で、発泡酒、ポンジュース、プリッツ(旨サラダ)を買って、ホールにある休憩所で一杯やる。12畳ほどの畳スペースで、長テーブルが置いてあって、銘々好きに食べたり飲んだりする。畳はかなり使い込んでいて焼けているし、表面もほぼずるむけだったが、清掃は行き届いており、座るのには支障ない。向かいのカップルは持ち込んだミスドを食べてたし、隣の老夫婦は事前にコンビニで買ったと思われるサンドイッチとノンアルビールで晩ご飯にしていた。超久しぶりに飲んだクリアアサヒが妙においしくて、缶に大書きされている「結局、飲みやすくておいしいのが一番」の文言に、思わず苦笑してしまった。


個人的に、関門橋の下をくぐる瞬間を楽しみにしていたので、出港後は部屋の明かりを消して、カーテンを開けて夜の景色を楽しむ。門司までは沿岸はかなり明るくて、この辺は意外と栄えているのだなぁと思わせる雰囲気があった。遠目で見ていたときは橋に明かりが灯っていたのだけど、通過する時点では消灯してしまっていて写真はイマイチだったのだけど、なかなか良い景色が見られてよかった。関門海峡は潮の流れが速いと聞くけれど、船は全然揺れずに運航は静かだった。ここから先は真っ暗だったけど、内海だからかもうずっとすべるように進むだけで、時々乗る東九フェリー(東京~門司)とは大違いだなと思った。やっぱり瀬戸内海いいわ。

パチリと4時頃目が覚めて、買っておいたコンビニの菓子パンで朝ごはんを済ませる。久しぶりにコンビニの惣菜パンを食べたけど、珍しくおいしくないなぁと思った。マフィンは、パスコのイングリッシュマフィンを使っているのかなと思いきや違うパンで、パン自体がおいしくない。中の玉子フィリングも余計で、半分食べた時点で残そうかなと思ったけど、とりあえず全部食べた。口が奢ってコンビニのパンは食べられなくなったのかと思ったが、後で考えると、もしかすると体調が良くなかったのかもしれない。
食べて身支度していると、5分早く着いたとのアナウンスで、4時55分に松山観光港に到着。

とりあえず、いよてつがフェリーの到着時間に合わせてJR松山駅や松山市駅などを経由して道後温泉駅まで行ける5時15分発のリムジンバスを出してくれているのだが、道後温泉に6時に付いてしまうので、そこで行き場を失ってしまう。というのも、実は、道後温泉本館の貸切室を8時に予約していたからだ。道後温泉自体は6時から開いていて、フリーの客は6時から入れるのだが、フリーだと入れないのではないかと危惧した夫は、事前に予約をしていたのだった。6時から入って、いったん出て、8時に入り直せば良いじゃんとも思ったものの、道後温泉は利用時間に制限があって60分で出なければいけない。6時、7時と2回風呂に入って、改めて風呂ってのも、なんか味気ないというか、厳しそうだな…。
一方でフェリーには、船内休憩という仕組みもあって、一旦乗客を降ろした後、タラップを上げて船を方向転換させてから、またタラップをおろすのだけど、そこまでは船で休んでいてもいいことになっている。ただ、次に下船できるのが、再びタラップをおろす6時半~7時の間になってしまう。私はそれでも良かったが、それだと8時の予約に間に合うかどうか不安だった夫は大分迷った末に、すぐに下船する方を選択し、リムジンバスに乗った(リムジンバスに乗らない場合は、バス、電車、路面電車と乗りついで行く必要がある)。バス自体私たちも含めて4名しかいなかったのだが、終点の道後温泉駅まで行ったのは私たちだけだった。

1本の記事で松山旅行をまとめるつもりだったが、思いの外長くなったし疲れたので、ここで一旦締めることにする。