道後温泉本館の個室を8時に予約しているのに、6時に道後温泉駅に着いてしまった私たちは、とりあえず、路面電車の始発を待って乗り込み、大街道まで行く。
松山の公共交通機関はほぼいよてつがまかなっており、郊外電車(電車)、市内電車(路面電車)、バスの3本柱で運営されている。交通系ICの導入は遅れており、ICが使えるのは現時点では路面電車とリムジンバスだけ。幸い、ここまでスイカが使える乗り物だったのでありがたいが、それでもどのタイミングでピッとするのか、どこにピッとするのか分からず(みきゃんアプリとICのピッとするところはそれぞれ違うので)、最初は多少おたついた。慣れない土地のバスや電車はやっぱりドキドキする。

大街道の入口に立つと、どえらい大通りで驚いた。最初「だいかいどう」と読んでいたが、正解は「おおかいどう」。ローマ字を添えてくれるのは助かる。

わざわざ路面電車で移動した目的は、大街道の入口近くにあるマクドナルドである。6時台に開いているお店はこれ以外だと、松屋や吉野家になってしまう。コーヒーチェーンは早くても7時だし、もはや24時間営業のファミレスなどあるはずもなく、頼れるのはマックしかない。
コーヒーと、夫はフィレオフィッシュも頼んで、2階のテーブル席に座る。温かいコーヒーが染みる。Wi-Fiも使えて、きれいでくつろげる雰囲気。ありがとうマック。コミュ障なので、どうしても旅先では巨大チェーンの世話になることが多いが、今回も救われた。

8時の予約に間に合うように、改めて道後温泉駅まで戻り、道後温泉に向かう。ここで初めて気付いたが、道後温泉駅にスタバが入っていた。でもオープンは8時からだった。



道後温泉駅から道後温泉まではアーケードになっていて、お土産屋さんなどが軒を連ねているのだけど、8時前だとほぼどこも開いてない。「鳩屋」というお土産屋さんの名前がいい感じだったが、まだ開いておらず残念至極。次の機会があれば、是非立ち寄りたい。

アーケードが切れたところで、道後温泉本館が姿を現す。古さを残したままの改修で、雰囲気はいい。建物の周りをそぞろ歩く外国人観光客と日本人観光客の比率は半々かなぁという感じだった。


道後温泉は結構複雑な仕組みになっていて、ふらっと行って、好きなように風呂に入れる施設ではないところが、ひとつポイントだと思う。道後温泉本館だと、「神の湯」と「霊(たま)の湯」の2つの風呂場があって、その上で、入浴コースが6種類あることを、まずは知っておきたい。
6つのコースは、①「神の湯階下」、②「神の湯二階席」、③「霊の湯二階席」、④「霊の湯三階個室」、⑤「霊の湯三階貸切室 しらさぎの間」、⑥「霊の湯三階貸切室 飛翔の間」。①~④はフリーで6時から入れるが、⑤と⑥は1日5組限定で時間指定されており、事前予約が必要。また、好きなだけ入れるわけではなく、いずれも時間制限があって、①~③は60分、④~⑥は90分。
①が基本で、1階のお風呂(神の湯)に入れるだけで700円。タオルも付かないので、手ぶらなら貸しタオル100円か、バスタオル300円を借りる必要がある。②以降はそれぞれ所定の休憩スペースが使えるほか、浴衣や茶菓子が付いたり、2階のお風呂(霊の湯)も入れたり、さらに貸しタオルや又新殿の見学が付いたりして、値段がどんどん上がっていく。貸切室だと室料も取られる。最もお高いのは⑤で、室料6,000円プラス大人1名1,300円。2人で行くと8,800円だ。
かなり複雑な上に、有名な観光地ということで、どれだけ人が来るのかな、待つのかなといった心配もあって、夫は事前にホームページで検討する際に大分悩んでいたが、最終的に⑥で予約。夫が言うには、⑥は室料3,000円なのがぎょっとするけど、大人1名1,300円なので、2人で合計5,600円で、④の5,000円とそんなに変わらない。それで確実に入れるのだから、これがいいんじゃないとのことだった。結果的には、お客はあんまり多くなくて④でも大丈夫そうだったのだが、ただ、予約しているという安心感はとても大きかった。
入口にも料金表が掲げられているが、初めて見てもすぐには理解できないと思う。実際、せっかくだから道後温泉も寄ってみたと言う体の夫婦連れがこの表の前で大分悩んでいて、ちょっと気の毒に思った。ボランティアっぽいスタッフは沢山いたので、料金表をわかりやすく説明する案内人を置いてもいいんじゃないかと思った(もう少し時間が後になったら、いるのかもしれないが)。
「霊の湯三階貸切室 飛翔の間」は2階のものすごい急な階段(ほぼハシゴ)を上った先にある二間続きの和室で、和風旅館の趣。小さな鏡台に化粧水とヘアトリートメントのスプレー、ドライヤーがあった(ただし鏡台の周囲にコンセントがなく往生した)。障子風の引き戸はネジ式の鍵が付いていて、開けたらすぐに外。少し高台にあるが、それほど景色がいいわけではなく、周囲をそぞろ歩きする観光客がちらほら見える程度だった。ただ、後で気付いたのだが、手前の部屋の引き戸を開けたところから、振鷺閣の塔屋にある白鷺の像が見えるらしいので、それを見なかったのはちょっと残念だった。部屋にカギはないので、貴重品は持ち歩く必要がある。ただ、荷物とコートが置けるだけでも、結構助かったなぁとは思った。



ちょっと怯んだのが、貸し出し品が浴衣とハンドタオルとバスタオルだけだということ。まだ寒いこの時期に、浴衣1枚に裸足で風呂場まで移動させるのはなかなか酷だなとは思った。羽織と靴下も欲しいよーとは正直思った(実際、風呂上がりに裸足で移動して足から冷えて残念だった)。ただ、靴下で急な階段を上り下りさせるのは危険だという判断かもしれないし、温泉に入れば羽織なんか要らないでしょということなのかもしれない。
肝心のお風呂だけど、期待していたよりもいいお湯だった。無色無臭透明だけど、さらりとしていて、じんわり温まる。長く入っていたい優しいお湯だなと思った。浴槽はちょっと深めで、中腰でしっかり肩までつかるか、ヘリに腰掛けて半身浴するかのどっちか。私が入ったときは、神の湯は6~7人ほどだったかな。湯船はそれほど大きくないので、それくらい入ってギリギリパーソナルスペースが保てる程度だった。男湯の方も10人くらいだったとのこと。
そういえば、公衆浴場に行くたびに夫から聞かされるのだが、男湯は本当に非道らしくて、桶は散らかしっぱなし、使いっぱなし、洗面所は泡が残っているなど、そんな状態がデフォだそうで、今日も残念ながらそうだったとのこと(夫はいつも可能な範囲できれいにして出るそうです)。この話、どこに行っても聞くのだけど、何度聞いても信じられん。普通の銭湯行っても、スーパー銭湯でも、そんな経験したこと一度もないし、自分が使ったら、きれいにしてから出るのは当たり前でしょって思うのだけど。それでも、道後温泉のお湯は夫も気に入ったみたいだったので、良かった。
2階の霊の湯は、終始お客は私だけだった。あとは、掃除の人が長いこといたのだがなかなかマイペースな人で、お湯につかりながら整理や掃除する様をずっと見ていたのだけど、何だか面白かった。掃除の人が出ていった後、気を大きくしてうっかり湯船で軽く泳いでしまったのだが、それってまるきり『坊ちゃん』じゃんと気付いて、ひとり苦笑いした。お湯も、お風呂の感じも「神の湯」とそう変わらないのだけど、お客が少ないという1点ではるかにいい印象があった。男湯も「霊の湯」は少なかったそうだ。

2つお風呂に入って、上がってきたら残り20分ほどしかなくて、結構ギリギリ。ボタン押すとスタッフの人がお茶とお茶菓子を持ってきてくれる。てっきり「坊っちゃん団子」かと思っていたら違うお菓子で、「湯上がり乃しらさぎ」という洋風饅頭だった。
みかんジャムを練り込んだ白餡の饅頭で、外はホワイトチョコレートでコーティングされていて、白鷺が模されたデザインが案外かわいらしい。みかんの餡が結構おいしかった。敷いた紙は椿のイメージで、松山市の花なのだそう。お茶を淹れてくれたお兄さんに、霊の湯は私しかいなくて驚いたと言ったら、「今日は空いてますわ」と言われたので、多分、今日はラッキーなんだなと思った。

お風呂の料金には、又新殿(ゆうしんでん)のガイドも付いているので、最後に案内をお願いする。又新殿は皇室専用風呂で実際に昭和天皇とか常陸宮とかが入浴したとのこと。地面を掘り込んで作った石造りの階段状の浴室に、白い浴衣を羽織って入ったそうで、あんまり楽しくなさそうな風呂だなあと思ってしまった。ちなみに、別館の飛鳥乃湯温泉では、又新殿の浴槽が再現されていて、事前予約すると利用できる。
玉座の間や御居間のふすま絵が素敵で、写真を撮りまくったが、暗くてうまく映っていないのが少し残念。

特別室はとっても良かったけど、朝一番だったらフリーで行っても大丈夫そうな感じもあったので、今度フェリーで松山に行ったときは、④「霊の湯三階個室」でもいいかもなぁと思った。④は『坊ちゃん』に出てくる「上等」という個室に相当するので、坊ちゃん気分を味わえるのも、何だかよさそう。色々サービス的に思うところはあったけど、お湯がいいので大体チャラって感じが、道後温泉の感想でしょうか。
ここまで書いて疲れたので、続きはまた後で。