松山旅行最後の目的地である、伊丹十三記念館に向かう。松山は城を中心に観光地も商業地も住宅地も密集したコンパクトシティというのがウリのひとつだそうだが、それでいくと伊丹十三記念館はだいぶハズレにある。一応、いよてつバスで行けるが、車のないものにとっては、正直アクセスがいいとは言えない。実際、私たちと入れ替わりに出てきた年配のご夫婦は、タクシーを呼んで貰っていて、それで帰っていた。
天山橋というバス停から徒歩3分、小野川とその支流(運河?)に挟まれた場所に建っている。平屋建てで、特に高台に建っているわけでもないけど、遠くからでも見通せるところにあって、すぐにああ、あれだと分かる。中村好文設計だと知らなくても、なんかいい感じの建物ねーというのもありありと分かる。

名前にちなんで13のテーマごとに、色々な側面から伊丹十三を見せてくれるのだけど、やっぱり有名人なのであえて調べずとも知っていることも多くて、その上でじっくり展示を見ると、素直に大人物だなぁと改めて思う。一番印象に残ったのは小学1年生の時に書いた野菜の絵で、父(伊丹万作)が見て感心し、友人の中村草田男に見せたらどえらい気に入ってしまって譲り受け、以来中村家で保存されていたというのはむべなるかなというほどに、べらぼうに上手だった。私は画力って年齢を追ってうまくなるということはなくて、子どもの頃から上手いか下手かなだけだといつも思っているのだけど、またそれを裏付ける実例だなと思いながら見た。あと、文章も子どもの頃から達者で、小さい字で几帳面に枠に収めながらブレずに書き綴っている。上手ではないが素直な読みやすい字で、かわいらしい丸っこい文字なのが、ちょっとイメージと違っていて意外だった。とにかく文字の大きさも、文章の調子も常に一定なのがすごい。それが子どもの頃から、晩年近くの台本を書いているときも変わらないのがまたすごい。私は手書きで自分の意見をまとめるのがことのほか苦手なので、それだけで尊敬してしまう。
あとは、「遠くへ行きたい」のダイジェストを沢山見せてくれるのが楽しかった。結構意外だったのだけど、笑いの品がいい。それがスノッブ感にもつながるのかもしれないけど、私は世代的にこの後訪れる暴力的な笑いが席巻する時代に思春期時代を送っているので、こういう品の良さはちょっと羨ましい感じがあった。企画展示室では「食べたり、飲んだり、笑ったり」というテーマで、台所道具や日常で使っていた器を沢山展示していたのだけど、どれも凄くいい器。器の趣味は、なんとなく向田邦子に似た感じがあって、やっぱりハイセンスな人がどことなく通じ合っているのかと思ったり。道具は使い込まれた感じがよく伺えて、それゆえに、こうやって今はただ飾られているだけになっているのは少し寂しい感じもあった。ちなみに、館内は基本撮影可能なのだけど、展示を見るのに一生懸命になってしまって、ほとんど撮っていない。素敵な空間だったのだけど、そういうのを写真で上手に切り取れる人はすごいなと思う。どうにも私には絵心がないということを、つくづく痛感しながらの鑑賞でもあったような気がする。

結局、2時間ほどびっしり展示を見て、カフェで休憩。みかんジュース。夫は生姜湯と十三饅頭。アンケートを求められたので久しぶりに書いたが、こういうのさらさら書ける人ってすごいよなといつも思う。私はいつも考えすぎてしまって結局何も書けないタイプ。ある程度は訓練だと思うが、性格も大きいかなと思っている。
カフェの壁に貼ってあったけど、伊丹監督作品10作品の4Kリマスターが完成したらしく、そのプロモーションでTOHOシネマズ(日比谷と梅田)でも上映しているらしい。伊丹作品は権利者の意向で有料放送にしか流さない方針らしいので、観られるチャネルは、CSと映画館、あとはDVD、Blu-rayだけ。日比谷に行くか、日本映画チャンネルを契約して観るか、どっちかだな。

バスの時間まで売店で時間を潰し(文庫を3冊買った)、大街道まで戻って、松山三越でフェリーの時間まで時間を潰す。松山三越の1階には坊ちゃんフードホールというフードコートのエリアがあって、時間つぶしはここがよさそうと目を付けていたのだ。ただ、注文の仕組みが分かりづらくて、アレが食べたいけど、何だか頼みづらいわ…というのがちょいちょいあったのと、そもそも昼間にうどんを2杯も食べているので、そんなにお腹は減っておらず、さほど酒を飲みたいとも思わずで、食べたいもののチョイスは難航を極めた。結局、まずは地ビールスタンドで梅錦のヴァイツェンのレギュラーサイズ(324ミリリットル)とミックスナッツを注文。夫は、和食居酒屋系の店で天丼のセットを頼んでいた(とってもおいしかったらしい)。


1杯目のビールをサクッと飲み終えてしまい、お代わりはハートランドの生。スペインバル系の店で生ハムを頼んだ。生ハムと言いつつ、ラックスハムだったのは微妙だが、文句を言うまいて。あと、久しぶりに外でビール飲んで思ったけど、あんまりキリンのビール、口に合わなくなってきたなぁと思った。昔はキリン派だったのに。

こんな感じでダラダラと19時まで過ごしてから、松山観光港へむかう。
大街道からは、まず路面電車に乗って大手町まで行き、そこで郊外電車に乗り換えて高浜まで行く。高浜からは連絡バスがあり、それに乗って松山観光港まで行く。よそものには、郊外電車がスイカに対応していないというのがちょっと罠で、切符売場も、乗り換えの場所もわかりにくくちょっと焦った。松山観光港は小倉港と違って広くてきれい。売店やカフェなどもあるようだが、21時55分出港の私たちにはあんまり関係ないのが少し寂しい。

あとはフェリーに乗るだけなんだけど、疲れたので、続きはまた後で。